會長挨拶

2019_kaichou
米山 猛(金沢大學) 
塑性加工の大切さ,面白さ,ヴィジョン
Importance, Interest and Vision of Technology of Plasticity

 
1. はじめに
 
日本塑性加工學會は,材料が変形した後,もとに戻らない「塑性」という材料特性と,形を作るという「加工」技術を結合した塑性加工に関わる研究?技術の発展,産業の発展を目指した學術組織である.この「材料づくり」と「形づくり」が連攜して,日本のものづくり産業を支え,塑性加工に関わる研究の進歩を支えてきた.その背景には,1960年代の高度成長に象徴されるように,日本における自動車や電気製品などの工業製品の大量生産技術の成長があった.
ものづくり技術における塑性加工の最大の特徴は大量生産に適するということである.代表的な工法は金型やロール,ダイスなどの工具を用いて,材料の形狀を型の形狀に合わせる加工法である.近年は材料面でも,加工法の面でも多様な発展を遂げている.先輩の皆様の指針1)~5)を踏まえ,塑性加工技術をさらに発展させ,本學會のさらなる成長を目指して6),指針を述べてみたい.
 
2. 本會の発展方向
 
本會の課題については,將來計畫委員會の報告7)にまとめられ,「ぷらすとす」2018年3月號に掲載されている.また研究の発展方向については,塑性加工戦略委員會からの依頼を受けて,各研究分科會によって2050年までのロードマップが作成され,春季講演會や連合講演會で順次発表されている.本會がこれから取り組むべきことは,將來計畫委員會報告書で提言された活動を推進すること,およびロードマップに示された研究を発展させることであろう.
將來計畫委員會からは三つの観點と提言がなされている.
 
2.1 先進性
 
アジアをはじめ海外に塑性加工の技術?研究が広まる中で,先進的な研究,発表,ネットワーク,人材育成,技術発展の伝承を行うことを提言している.研究の展望は,各分科會?研究委員會からのロードマップにまとめられており,これらを広く公開し,ディスカッションを活発に行うとともに,新しい研究へのチャレンジを推進することが必要である.研究と情報交換の活性化としては,昨年からはじまった論文誌「塑性と加工」と會報誌「ぷらすとす」の分冊化をベースとして活性化を図る.「塑性と加工」については,世界の研究をリードする地位の獲得をめざして,英文論文の掲載や,世界的に権威のある賞の設立などの努力を進める.また「ぷらすとす」は,塑性加工をわかりやすく伝え,産業動向の把握や基礎的な學習にも役立つ會誌としてさらに発展することを期待したい.
また本會の研究を深め,新たな領域を開拓していくためには,他の學協會との連攜も重要である.塑性加工の技術には材料の技術と加工機械の技術そして加工プロセスの技術が統合されており,材料系,加工プロセス,加工設備系,そして解析や計測等の関連する學協會,産業界との連攜を深めることは,塑性加工學會そのものの発展にとって重要である.昨年度から進められている他の學協會との連攜をさらに発展させていきたい.また大學での基礎研究費が縮小し,「競爭的資金」という形で,研究費が絞られている中で,國の科學技術政策における塑性加工の位置づけを高めることが必要であり,そのための努力を進めたい.
 
2.2 成長性
 
賛助會員企業の海外展開の支援が強調されている.中小企業賛助會員の海外での活躍を紹介?支援し,留學生の出身國ごとの交流會,海外セミナー,海外の技術者への解説書の出版など,國際交流委員會を中心に具體化を進めたい.東アジアを中心とする各國の狀況,國民性などを理解することも大切であり,ものづくりへの考え方など,ベースとなる捉え方から交流することも必要であろう.
 
2.3 戦略性:持続的発展の基盤作り
 
塑性加工を指向する學生を確保するためには,塑性加工がものづくりの中で重要な役割を果たしていること,とても魅力的な分野であることをPRすることが必要である.學會活性化委員會を中心として,具體的な企畫を考案したい.學生のアイデアコンテストや2025年の大阪萬博をめざした企畫も面白いかも知れない.以前にアルミニウム押出しの國際セミナーに出席したことがあるが,押出し斷面形狀の様々なアイデアについてのコンテストがあり,これが,多様な押出し部材を発展させた原動力になったのではないかと思っている.職業訓練法人アマダスクールでは板金技術を活用したコンクールを行っており,このようなアイデア試作や技能コンテストは加工の面白さと巧みさを深める機會になっている.
塑性加工學會の活動継続のための組織體制の見直しなども重要な課題である.會員の負擔を軽減し,効率的な活動が行えるようなシステムを工夫したい.
 
3. 塑性加工のさらなる発展をめざして
 
塑性加工および,ものづくりのさらなる発展をめざして,いくつか思いつく私見を述べておきたい.
 
3.1 塑性加工の認知度の向上
 
「塑性加工」という言葉を一般の人はほとんど知らない.何と読むのかもわからないかも知れない.以前は「ものづくり不思議百科」等の解説書でものの作り方などを紹介したこともあったが,最近の若い人には伝わっていないように思われる.身近な飲料缶や椅子,家具,電化製品,スマートフォン,パソコン,車,ビルなど,塑性加工がいかに活躍しているかを知ってもらうことが必要だと思われる.工學系の學生だけでなく,文系の學生や一般の方にも知ってもらう取組を検討したい.そして一見地味なものづくりが様々な工夫と努力から成り立っていることについて,認知度を高めたい.
グローバル生産の拡大の中で8)塑性加工がますます重要な役割を果たすこと,そして「材料づくりと形作り」の重要性を伝えたい9).
 
3.2 製品や設計から考える塑性加工:ニーズから考える
 
學生は,自動車やロボットなど製品になっているものへの興味が高いが,そのための生産技術については,一段低く感じてしまう.一方,ものづくりに関わる研究者はともすれば,加工技術だけに関心が向きがちである.しかし,「ものづくり」そのものが目的ではない.ものづくりによって製品ができ,それが社會で活用されて人間生活に役立つことが目的である.したがって,現代の人間生活に求められていることをよく考えて,そのために役立つものづくりを考えることが大切である.EV車への転換やロボットの活用,醫療機械の発展,情報機器の発展,地球溫暖化の解決,マイクロマシン,防災技術など,世の中で求められている製品や技術を作るために,どんなものづくりが必要なのかを考え,研究?開発していく必要がある.
筆者のつたない著想を紹介すれば,まだ助手だった1985年ごろ,粉體にレーザを當てて焼結させて立體造形ができないかと試みていた.そのきっかけの一つは,筆者が考えていたセンサの構造を放電加工で作ることが難しく,3次元造形によって作れるのではないかと考えたからである.
また手術機器として屈曲と回転が可能なマニピュレータを試作したことがあるが,多數のリングをピンでつなげて屈曲するパイプを作ろうとしたのだが,一個一個の部品を外注して切削加工や放電加工で作ると大変な経費がかかり,斷念したことがある.一つの機械であっても多數の部品から構成する場合には塑性加工でパーツを量産できればとても便利なのである.
また全幅1 mmのマイクロハンドを組み立てることを試みたが,マイクロパーツを組み立てるには,ねじなどは実用的ではなく,圧入法や,かしめなどの接合法,ピンジョイントなど,塑性加工を活用した手法が有用であった.
このように製作するものに応じて,必要な加工法が生まれてくることも多く,どんな製品づくりが求められているのか,そのためにはどんな加工が必要かを考えることも大切である.
 
3.3 ものづくりの夢を語ろう:シーズから考える
 
イノベーションは,異種のものの組み合せ,逆転の発想,異分野の適用などから生まれてくる.ものづくりの革新においても,超音波加工,摩擦撹拌,サーボプレス,數値制御機械など,異種の組み合せによって生まれたものが多い.
ダメでもともとだと思って,將來のものづくりの夢を考えたいものである.前述の粉體を用いた立體造形について考えてみても,そもそもプリンタとは2色,3色の印刷ができるものなのだから,一つの金屬だけでなく,異種の金屬の立體造形を組み合わせたものづくりができるはずである.それによって,様々な機能的な構造材料が作成できるのではないかと考えられる.単に構造材料を作るだけでなく,機能性を持った構造體を作りたいということは昔からある夢である.生物が細胞からできており,一つ一つの細胞がエネルギを伝達?消費し,自己を修復し,情報を伝達しているように,エネルギ供給,情報伝達,センシング,自己修復など機能を組み込んだ構造材料の形づくりを発想してみるのも楽しいことである.例えばレゴのようなパーツをたくさん作って,それらを組んで,加圧して接合して構造體を作るというようなことも面白い.
 
4. おわりに
 
筆者のつたない著想も含めて,塑性加工および塑性加工學會のさらなる発展について述べた.表題に掲げた「塑性加工の大切さ,面白さ,ヴィジョン」とは,塑性加工が世の中で果たしている重要な役割についての認知度を高めること,塑性加工の現象や塑性加工を活用したものづくりの面白さを體感すること,そしてまだできていないものづくりの技術を社會が求めている製品から考えたり,これまでの技術の発展経緯から將來の技術を推測したり,いろいろな発想から思い描いてみることである.
最後に研究の面白さについて強調しておきたい.塑性加工の現象の解明についても,計測した情報をよく分析していくと,現象の仕組みが見えるようになってくる.新しい著想から実験を試みると,當初は失敗だらけでも,その原因を分析していくと,次の成功の道が見えてくる.最初はアイデアが浮かばなくても,いろいろな経験や知見をよく考えていくうちに,アイデアが浮かんでくるものである.どんなアイデアであれ,自分で考えることができるようになってくると,大変面白いものである.
 
 
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參 考 文 獻
1)木村昌平:塑性と加工,55-641(2014),489-490.
2)真鍋健一:塑性と加工,56-653(2015),433-434.
3)山崎一正:塑性と加工,57-665(2016),501-502.
4)吉田一也:塑性と加工,58-677(2017),457-458.
5)吉江淳彥:ぷらすとす,1-6(2018),383-384.
6)米山猛:ぷらすとす,1-1(2018),4-5.
7)第5次將來計畫委員會:ぷらすとす,1-3(2018),215-221.
8)米山猛:人と技術の社會責任,(2019),181-186,幻冬舎.
9)石村和彥:差別化戦略のための生産システム,(2019),271-273,日刊工業新聞社.
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